税理士が陥りやすい 相続対策の落とし穴-「争族」防止・納税資金・税額軽減・納税申告-

税理士が陥りやすい 相続対策の落とし穴-「争族」防止・納税資金・税額軽減・納税申告-

販売価格: 3,300円 税込

著者
山本和義・著
発行元
新日本法規
発刊日
2021-11-12
ISBN
978-4-7882-8938-3
CD-ROM
無し
サイズ
B5判 (225ページ)

失敗事例から得た落とし穴と、その対応策を提示!
◆相続対策で想定されるリスクや、誤認しがちな取扱いを「落とし穴」として示しています。
◆リスク回避の要点や、より効果的な対処方法を「対応策」として示し、解説しています。
◆豊富な経験を持つ税理士のノウハウが盛り込まれた実践的な一冊です。

目次
序 章 相続対策の取り組み方

1 相続対策の基本3本柱
2 相続対策を始める前にしておくべきこと
3 どのステップでもできる相続対策
4 家族の幸せ対策
5 相続税だけでなく、法人税や所得税、贈与税なども考慮した対策

第1章 相続争い(争族)の防止対策に関する落とし穴

【1】 遺言書に記載した内容が不十分であったため、遺産分割協議が必要となる場合
●落とし穴
相談事例の場合、甲よりも先(又は同時)に、乙又は丙が死亡した場合に、死亡した者の遺言の当該部分は失効してしまう。そのため、受遺者の相続人が代襲相続することはなく、遺言者の相続人が遺産分割協議によって相続することになる。 そのため、丁も遺産分割協議によって、遺産を取得する可能性がある。
【2】 全ての特例対象宅地等について遺言書を残さなかったことにより、小規模宅地等の特例の適用を受けることができなくなる場合
●落とし穴
小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、特例対象宅地等を相続した全員の選択同意がある場合などが要件とされている。そのため、遺言書によって取得する事業用宅地等について、小規模宅地等の特例の適用を受けようとする場合には、未分割である貸宅地も特例対象宅地等に該当することになるため、相続税の期限内申告において、共同相続人全員による選択同意が得られない場合には、小規模宅地等の特例の適用を受けることができない。
【3】 特定の相続人にだけ相続させ、その他の財産については、知人に遺贈する内容の遺言書を残す場合
●落とし穴
相談事例の場合、乙が遺贈の放棄をしたことによって乙が受けるべきであった財産は、甲の共同相続人が相続することになる。 なお、弟が相続した財産については特別受益と判定され、みなし相続財産に法定相続分を乗じて計算した金額から、弟の受けた特別受益の額を控除した残額がない場合には、弟は乙の遺贈の放棄により帰属する相続財産はないことになる。
【4】 「その余の財産は○○に相続させる」とした遺言書を残す場合
●落とし穴
遺言書の解釈に当たって、遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探求すべきとする最高裁判決があることから、相談事例の場合、遺言書の内容によっては、長男が相続することができるとは限らない。
【5】 遺言書を残しておかなかったことにより、会社の後継者に必要な資産を相続させたいとの願いを実現することができない場合
●落とし穴
相談事例の場合、甲が遺言書を残さなければ、法定相続分によって遺産分割協議が行われ、長男がA社の後継者として必要な資産を相続することができなくなる可能性がある。また、未分割の株式は準共有状態になりA社の事業承継に支障が生じることもある。
【6】 相続人でない甥に遺産を残す方法として、養子縁組か遺言書のいずれかの方法を検討する場合
●落とし穴
相談事例の場合、甲は、甥と養子縁組を行うと、第1順位の子がいる相続となるため、相続税の計算において法定相続人の数が減少することにより、相続税が重くなる。 もう一つの選択肢は遺言書で妻と甥に遺産を相続させる旨を書いておくことである。この場合には、兄弟姉妹には遺留分が認められないので妻と甥に全ての財産を相続させることができるが、遺言書の書換えがあれば遺産を取得することができなくなる。
【7】 相続税軽減対策のための養子縁組が、相続争いの原因となる場合
●落とし穴
「相続税対策で孫と結んだ養子縁組は有効かどうか」について、最高裁平成29年1月31日判決では「節税目的の養子縁組でも直ちに無効とはいえない」と判示している。 しかし、養子縁組によって相続税の軽減効果は期待できるものの、法定相続割合が変動することから、遺産分割協議が紛糾する可能性に留意が必要となる。
【8】 遺留分の放棄があったときに、前提とした相続発生の順番が異なることとなった場合
●落とし穴
遺留分の放棄があっても相続の放棄ではないため、遺言書が残されていないと遺留分の放棄をした者を含めて遺産分割協議が必要となる。また、相談事例において、甲よりも先に妻が亡くなった場合には、遺留分の割合は変動することについて説明が不可欠である。
【9】 自社株の大半を子へ生前贈与し、会社の代表を譲り一役員へと退いたが、その後の親子関係の悪化により、役員を辞任することになった場合
●落とし穴
相談事例の場合、長男が大半の株式を所有することになれば、株主総会において役員人事も長男の意思によって決めることができる。そのため、株主総会において、役員の任期満了に伴う改選で父は取締役を辞任せざるを得ないことも起こり得る。
【10】 当事者間において借地権は認識しないものとする「土地の無償返還に関する届出書」を提出したが、敷地を相続した者に対して借地人である同族法人から借地権の主張があった場合
●落とし穴
「土地の無償返還に関する届出書」の提出があった場合に、借地権はないものとするのは、税務上の取扱いに限られ、借地借家法では、建物の所有を目的とする土地の賃貸借であれば、借地権が生じることになる。

第2章 相続税の納税資金対策に関する落とし穴

【11】 貸宅地の物納を検討する場合
●落とし穴
貸宅地の物納は、管理処分不適格財産と勘違いし、代わりに土地に権利関係が生じていない不動産(更地など)を物納などによって処分すると、有効活用ができる不動産や自由に換金処分することができる優良な不動産を失うことになる。
【12】 上場株式等の物納を検討する場合
●落とし穴
物納は、金銭納付が困難な相続人の選択により例外的に認められている。金銭納付が困難な場合には、上場株式等は物納に充てることができる財産であることから、定められた申請期限までに物納申請書など一定の書類の提出をすれば物納が認められる。 上場株式等は物納に充てることができる財産の第1順位の財産であり、その財産を換金処分して相続税の納税に充てる必要はない。
【13】 相続財産に多額の現預金が残されている場合でも、物納を選択できる場合
●落とし穴
物納の要件は、金銭納付が困難である場合に限られている。そのため、相続財産の中に多額の現預金がある場合に、物納を検討する相続人が多くの現預金を相続すると金銭納付困難事由に該当せず、物納は許可されない。
【14】 相続税の納税資金に活用しようと考えていた生命保険金が、長生きをすることにより使えなくなる場合
●落とし穴
満期がある生命保険金は、長生きすると満期を迎え満期保険金を受け取ることになる。満期保険金は死亡保険金よりも金額は少なく、かつ、相続税において死亡保険金の非課税規定の適用を受けることができない。
【15】 相続した株式の一部を会社が買い取り、その売却代金で相続税を支払う場合
●落とし穴
相談事例の場合、相続財産に占めるA社株式の割合が高い場合には、その株価を引き下げて相続税を軽減しないと相続税の納税ができなくなるが、持株会社の設立などの対策はコストがかかる。

第3章 相続税の軽減対策に関する落とし穴(生前対策)

【16】 養子縁組による相続税対策として、実子の他に複数養子縁組をする場合
●落とし穴
相続税の基礎控除額、相続税の総額の計算、生命保険金の非課税規定及び退職手当金の非課税規定の適用に当たっては、実子がいる場合、原則として複数の養子は1人と数えることとされているため、相続税の軽減効果は期待できない。
【17】 都心のタワーマンション取得による相続税対策を行う場合
●落とし穴
都心のタワーマンションは、一般的に時価と相続税評価額の乖離が大きく、その評価差額によって相続税が軽減される。また、貸付の用に供していれば、家屋は「貸家」として、その敷地は「貸家建付地」として評価され、さらに「貸付事業用宅地等」として200㎡までの部分について通常の評価額から50%減額を受けることもできることから、相当額の相続税の軽減につながる。 しかし、租税回避のみを目的としたタワーマンションの取得については、財産評価基本通達6において、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」としていて、税務上の否認事例が多発しているので、注意が必要である。
【18】 非上場株式等についての相続税の納税猶予の適用を受けようとする場合
●落とし穴
非上場株式等についての相続税の納税猶予の適用を受けようと考える場合には、自社株の相続税評価額を引き下げてから納税猶予の適用を受けるようにしなければ、納税猶予の適用を受ける相続人だけでなく、共同相続人の相続税が重くなる。
【19】 賃貸アパートの借入金を完済したため、当該アパートを子へ贈与する場合
●落とし穴
相談事例の場合、賃貸アパートだけを贈与すると、敷金の清算が行われていないので、「負担付贈与」に該当する。そのた
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