スラップ訴訟 法的論点と対策

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「恫喝訴訟」や「いやがらせ訴訟」などを意味する「スラップ訴訟」を客観的に分析し、日米における名誉棄損法の歴史的展開から、スラップ対策につながる法理を明らかにします。
それをもとに、既存の法制度を利用した対策から日本版スラップ被害防止法の制定までを射程に論点を整理し、スラップ訴訟の被害者側が実務的にとりうる手段を考察します。
目次
第1章 スラップ訴訟とは?
第1節 スラップ訴訟の実態
1 スラップ訴訟とは市民参加を妨害する訴訟である
2 アメリカの事情
⑴ 公聴会等での開発許可への反対
⑵ 自然保護運動
⑶ 公的人物の批判
⑷ 政府への請願
⑸ 労働争議の救済
⑹ 市民参加にとり重大な脅威
3 日本におけるスラップの現状
⑴ 伊奈太陽光発電スラップ訴訟
⑵ DHCスラップ訴訟
⑶ N国スラップ訴訟
第2節 捉えどころのないスラップ概念
1 スラップ訴訟をめぐる議論の錯綜
2 スラップ訴訟の定義の困難性
3 それでもスラップ対策が必要!
第2章 アメリカ合衆国の名誉毀損法
第1節 コモン・ロー上の名誉毀損
1 ライベルとスランダー
2 ライベルの成立要件
3 複雑な損害の種類
4 免責事由
5 名誉毀損的表現と表現の自由
第2節 アメリカにおける「名誉毀損法の憲法化」
1 ニューヨーク・タイムズ判決の「現実の悪意」の展開
⑴ 虚偽言論も保護した!
⑵ 現実の悪意とは?
⑶ 公務員とは?
⑷ 公的関心事項への拡大
2 ガーツ判決の「公的人物」テストの展開
⑴ 公的関心テストを否定した
⑵ 「対抗言論」を取り入れた
⑶ 「危険の引受」も理由の一つ
⑷ 公的人物とは?
⑸ 公的人物の範囲
⑹ 非自発的限定的公的人物
3 アメリカ合衆国の名誉毀損法の現在
⑴ 公的関心テストの復活
⑵ 公的関心事項の重視
第3章 アメリカ合衆国におけるスラップ被害防止法
第1節 スラップ訴訟に対する実体的規制
1 現実の悪意の法理
2 ノア・ペニントン理論
3 ノア・ペニントン法理の優越性
4 POME基準
5 連邦民事訴訟規則による救済策
6 スラップ被害防止法の必要性
第2節 スラップ被害防止法の展開
1 スラップ被害防止法の制定
2 スラップ被害防止法の適用範囲
⑴ 提訴者
⑵ ターゲット
⑶ 適用対象の複雑性
3 スラップ被害防止法の救済手段
⑴ 免責
⑵ 特別の訴え却下の申立て
⑶ 迅速な進行
⑷ 証拠開示の一時停止
⑸ 立証
⑹ 弁護士費用等の賠償
⑺ 上訴
⑻ 政府の介入
4 スラップ被害防止法の「勝訴の蓋然性」
5 「統一公的表現保護法(UPEPA)」の制定
⑴ スラップ被害防止法の拡大
⑵ UPEPAの内容
⑶ スラップ被害防止法の制限の動き
6 スラップ被害防止法の問題点
⑴ スラップ被害防止法に対する批判
⑵ 平等権侵害
⑶ デュー・プロセス違反
⑷ 州籍相違事件とスラップ被害防止法
第3節 スラップ被害の防止対策に向けて
第4章 日本における名誉毀損法の問題点
第1節 刑法上の名誉と表現の自由の調整
1 刑法上の名誉とは?
2 刑法上の名誉保護
⑴ 戦前の立法は?
⑵ 戦後の刑法230条の2の追加
⑶ 真実性を誤信した場合は?
3 刑法230条の2は、憲法論が欠如・欠落している?
4 刑法学における表現の自由とは?
⑴ 名誉毀損法の憲法化は時代錯誤か?
⑵ 名誉毀損罪は情報流通を阻害する
⑶ 思想の自由市場論
⑷ 刑法230条の2と表現の自由の架橋に成功したのか?
第2節 民事上の名誉と表現の自由の調整
1 民事上の名誉とは?
2 民事法上の名誉概念の変遷
⑴ 人格権としての名誉
⑵ 名誉とプライバシーの分離→前科の開示は名誉毀損か?
3 情報社会における「名誉」とは?
4 虚名は保護されるのか?
第3節 相当性の法理
1 相当性の法理に関する判例理論
2 公共の利害に関する事実
3 公共の利害に関する事実の判断要素
⑴ 公務員・公職の候補者
⑵ 公人
⑶ タレント・芸能人
⑷ 被疑者等
⑸ 公人と公共性の関係
4 相当性の法理の判断基準
第4節 名誉毀損法の憲法化の必要性
第5章 日本における名誉毀損法の憲法化
第1節 名誉毀損と表現の自由
1 名誉毀損的表現と表現の自由
2 相当性の法理と表現の自由
⑴ 公的言論保護の必要性
⑵ 相当性の法理では公的言論を保護できない!
第2節 日本における「現実の悪意」の法理の展開
1 現実の悪意の法理
2 相当性の法理と現実の悪意
3 現実の悪意に関する裁判例
⑴ 現実の悪意を採用する判例
⑵ 現実の悪意を否定する判例
4 現実の悪意に関する学説
⑴ 現実の悪意を肯定する学説
⑵ 現実の悪意に否定的な学説
⑶ 否定説に対する反批判
5 日本でも現実の悪意の法理を採用すべき!
⑴ 公的人物の背景
⑵ 「公的人物の抗弁」-「現実の悪意」の法理の再検討
⑶ 現実の悪意の採用へ
第6章 日本におけるスラップ訴訟の事例
第1節 スラップが疑われる事案
1 政治家による名誉毀損訴訟
2 環境問題
3 企業に対する告発
4 その他団体等の告発
5 地方自治に関する告発
第2節 スラップが否定された事例
第7章 日本におけるスラップ対策の課題
第1節 スラップとは社会事象である
1 日本におけるスラップ対策の必要性
2 スラップ概念の曖昧性
3 「スラップ」から具体的法効果が導かれるわけではない!
第2節 スラップ対策
1 訴えの却下
2 まずスラップ訴訟に勝訴することが必要
⑴ 相当性の法理・公正な論評の法理
⑵ 立証責任の転換
⑶ 現実の悪意の法理の主張
3 不当訴訟を理由とする反訴の提起
4 その他
⑴ 適切な訴訟指揮を求める
⑵ 訴訟外の方法
第3節 日本におけるスラップ被害防止法の可能性
1 日本でのスラップ被害防止法の必要性
⑴ 立法化の必要性
⑵ 慎重説
⑶ 日本の実情に合った立法化が必要
2 スラップ被害防止法の適用対象
3 特別の訴え却下の申立て
⑴ 初期段階での訴えの却下
⑵ 審理手続
⑶ 弁護士費用等
4 公的介入
5 立法事実の精査を!