人事管理のリサーチ・プラクティス・ギャップ 日本における関心の分化と架橋
販売価格: 3,630円 税込
日本の人事管理に研究者と実務家はどのような関心を抱いてきたか。その推移や相違を振り返り,両者の関心がしばしばずれることを踏まえてなお,望みうる建設的な関係性を議論する。実学が避け難い問題に正面から向き合った,気鋭の研究グループによる展望の書。
■「はしがき」より
本書は,日本における人事管理の研究や実務そのものの歴史ではなく,研究者と実務家の関心の歴史を記したものである。とりわけ両者のずれ(リサーチ・プラクティス・ギャップ)に関する考察を通じ,研究者と実務家の望ましい関係性について,将来展望を行う。両者の関係に関心を持つ人すべてが想定読者層に含まれるが,このようなテーマへの向き合い方,つまり本書の読み方は,さまざまでありうるだろう。
本書はいわゆる学術書であり,読者層として真っ先に想起されるのは,大学等の研究機関に所属する研究者,あるいは民間企業や公共組織などで実務に従事する傍ら研究に従事する人々である。こうした方々には,ぜひ全編を通して読んでいただきたい。詳しくは序章の末尾で述べるが,本書では,研究者と実務家の関心がなぜずれがちなのかについて,人事管理を実例に第1章(そしてその前触れとしての序章)で説明している。この説明内容は,研究者のあり方についての自省につながるだろう。そして第2章では,日本の人事管理に対する研究者と実務家の関心の構造や推移の解明につながるとして,近年注目を集めてきた体系的文献レビュー(systematic literature review)や計量書誌学(bibliometrics)的手法が解説される。こうした手法は,発見事実(エビデンス)を何より重んじる研究においてしばしば採用されてきたが,筆者は「素朴に」発見事実を重視する姿勢に対して懐疑的である。その上で,本書における分析の対象や手法を第3章で,結果は第4章から第6章で説明する。分析結果を見るだけでも一定の洞察は得られるだろうが,その背景にある,筆者の観察対象への臨み方を共有することで,分析結果についてより深く,かつより批判的に捉えることができるだろう。
人事管理に関心を持つ実務家も,筆者自身が実務家との関係のあり方について日々模索する研究者である以上,ある意味で研究者以上に重要な読者層である。実務家の多くが,人事管理の研究のみならず,実務の歴史を体系的に理解していない。各時代の人事管理の実務家が,どのような問題意識を持ってそれに臨んできたか,存外に理解していないのである。そのため,実務家にとっても,研究者と実務家の関心がどのようなもので,なぜずれがちなのかをめぐる本書の検討は,自らのあり方を振り返り,捉え直すという点で有意義でありうる。研究者と実務家の関心について記述した第4章から第6章は,結果の内容そのものが実務家の興味を引くだろう。とりわけ第4章と第5章は,実務家と異なる信念・概念の体系の中で生きている研究者が,人事管理という事象をどう捉えているのかを知る材料になるだろう。研究者は実務家とは異なる見方を有しており,また,実務家が重視してきたことのすべてが研究対象となっているわけではない。こうした事実を知ることが,実務家として,研究者とのかかわり方を考えるきっかけになるだろう。第6章は,自分自身や先人たちのこれまでの歩みを振り返る格好の材料となるだろう。
研究者と実務家の双方に必ず読んでもらいたいのが終章である。最後の章ではあるが,最初に読んでもらいたいとすらいえる。終章では,本書での一連の検討内容を要約した上で,研究者と実務家の関心のずれ,すなわち人事管理のリサーチ・プラクティス・ギャップの実態を体系的に説明している。その上で,研究者と実務家のそれぞれがどのように他者とかかわればよいか,両者の関心をどう架橋すればよいかについて,筆者の考え方を示している。ここを一読し,その内容に興味が湧き,疑問や批判の芽を生じたならば,改めて序章以降の各章の全体あるいは部分を読み進めていただきたい。
■目次
序 章 人事管理をめぐる研究と実務の関係
第1章 人事管理研究者の実務への対峙
第2章 人事管理研究における体系的文献レビュー
第3章 体系的文献レビューのためのデータと手法
第4章 人事管理研究における関心の構造と推移
第5章 被引用文献から探る人事管理研究における関心
第6章 人事管理実務における関心の構造と推移
終 章 日本の人事管理における研究と実務の交流に向けて