国際税務基準として機能し出したBEPSを肌で感じ、実際の対応を迫られる納税者サイドから解説。ニュースになった事件などから繙く本当に一番やさしいBEPS教科書。

最近、新聞やネットニュースの経済関連の話題の中で「BEPS」という文字を頻繁に目にするようになりました。
国際的な税の世界、つまり国際税務に限れば、間違いなく、過去5年で、ナンバー1トピックであり、向こう5年でもその座は揺るぎないでしょう。
その「BEPS」について、多方面から、さまざまな光を当てて、いくらかでも全体像が読者の皆さんに伝わるよう筆を起こしました。
「BEPS」は、国際的な税の世界において語られる

“Base Erosion and Profit Shifting"

の略称で、一般的に「ベップス」と発音され、日本語で「税源浸食と利益移転」と訳されています。これだけ聞くと、ちょっと、抱かれているイメージと異なる印象を持たれた読者の方が多いのではないでしょうか。

なぜなら、「BEPS」あるいは「ベップス」と表現された場合に、「BEPS問題」「BEPS対応」「BEPSプロジェクト」「BEPS行動計画」など、使用される場面や段階に応じて、さまざまな意味を持った「BEPS」や「ベップス」に変化して使われているからです。
ときには、これからの国際税務の枠組みを決めるルールとまでいわれることもあります。いわゆる広義の「BEPS」という理解でしょう。

つまり、「BEPS」には、「税源浸食と利益移転」という日本語訳はありますが、その日本語訳だけで用が済むことはほぼ皆無で、何かがプラスされて、ようやく、「BEPS(ベップス)」として理解され、使われ、機能していくということでしょう。

さあ、「BEPS」が何なのかを可能な限り明らかにすることが、本書の使命だと考えています。光を当てきれないところは、著者の経験と人脈から得られた情報で可能な限り、フォローしました。
現在進行形の「BEPS」を書くということは、皆さんにお届けするときに、すでに古くなっているということですが、それでも筆を執ったのは、少しでも多くの方に「BEPS」に注目してもらい、「BEPS」を語ってもらいたかった からです。
なぜなら、いままで、「税」は国内の問題として語られ、ルールは国内のみで機能してきました。その「税」の世界に、初めての国際ルールが誕生しようとしているのです。このエポックメーキングな事象を「税」に携わる方だったら、ぜひ とも語ってもらいたいと思ったのです。