エビデンスから考える現代の「罪と罰」―犯罪学入門

販売価格: 2,750円 税込
- 数量
凶悪犯罪が起こるたびに叫ばれる「厳罰化」は、実は犯罪対策としては機能しない。
犯罪の背景には、差別や格差、孤立、生活苦などの、人としての尊厳に関わる困難な環境が存在する。そこへの対応こそが重要である。
著者はかつて少年鑑別所、少年院、少年刑務所、刑務所などで働き、また国連機関で各国の事情を研究し、現在は大学で研究を続けている。
その豊富な経験と多くの科学的証拠(エビデンス)から、犯罪対策を考える上で忘れてはならないのは、罪を犯す人たちが私たちと同じ人間であり、刑罰を受けた後は地域社会で生活を共にするという事実であると、著者は説く。
そして刑罰について考える際には、そのような人たちにどのような人になって地域社会に戻ってきて欲しいのか、そのために何が必要なのかという視点が不可欠だという。
このような視点から、最近の国会や法制審議会で具体的に議論となっているテーマを中心に、あるべき犯罪対策・刑事政策を考えるのが、本書である。
〇目次
はしがき
序論 犯罪学とは何か
犯罪とは何か
犯罪者とは何者か
犯罪学とは何か
筆者と犯罪学
本書の構成
第1部 少年非行の諸問題
第1章 少年非行減少の原因を探る
はじめに
世界で減り続ける少年非行
非行減少を説明する3つのキーワード
日本における少年非行減少の理由
日本の少年非行の変化
おわりに――サブカルチャーとしての非行文化の衰退
第2章 非行少年たちはどこに行ったのか
はじめに
統計からみた非行文化の衰退
子どもの貧困の増加と非行の減少
警察の取締り方針や防犯対策と少年非行
日本の少年非行はなぜ減少しているのか
スマホと日本の少年非行の減少
おわりに――少年非行減少の先にあるもの
第3章 犯罪統計から見た少年法適用年齢引下げの問題点
はじめに
日本の少年非行の動向
日本の治安に対する少年司法の貢献
年齢引下げが非行少年処遇に与える影響とその問題点
若年犯罪者の特徴
おわりに
第4章 少年事件の裁判員裁判で議論されるべきこと――少年院と少年刑務所の違いを中心に
はじめに
少年犯罪の動向
少年院と少年刑務所における処遇の違い
専門家証人の経験から
おわりに
第5章 家族と非行の犯罪学
はじめに――親と非行
非行と家族の経済状態との関係
エビデンスに基づく刑事政策
保護観察の弱点
因と縁
司法ソーシャルサービスと家族支援
イタリアの社会内処遇
おわりに
第2部 刑罰の諸問題
第6章 刑務所と社会との関係を考える――大井造船作業場の逃走事案から
はじめに
大井造船作業場とは
逃走の原因
逃走の何が問題か
開放刑務所からの逃走をどう防ぐか
逃走しても再犯させない対策
おわりに
第7章 刑事司法と認知症――認知症受刑者から見える刑事司法の課題
はじめに
認知症とは
認知症と責任能力
認知症と矯正処遇
諸外国での状況
おわりに
第8章 懲役刑の廃止と自由刑の一本化の課題
はじめに
懲役刑とは何か
懲役刑の歴史
懲役と強制労働
自由刑の執行における労働の義務と懲役との違い
懲役刑としての刑務作業の功罪
懲役刑と受刑者の高齢化
懲役刑廃止後の刑務作業
ソーシャルファームの活用
おわりに
第3部 犯罪学の最前線
第9章 矯正保護に関するエビデンスから見た日本の犯罪者処遇
はじめに
エビデンスに基づいた政策決定
更生(立ち直り)のプロセス
矯正保護処遇に関するエビデンス
おわりに――エビデンスから見た日本の矯正保護の進むべき方向性
第10章 犯罪生物学の過去・現在・未来――脳・遺伝と犯罪
はじめに
犯罪(生物)学の誕生とロンブローゾの生来性犯罪人
ガルの骨相学
ゴダードとカリカック家
遺伝と犯罪
サイコパスと遺伝
脳と犯罪
虐待と脳
脳と責任能力
脳科学と自由意志
おわりに
第11章 日本における外国人犯罪
はじめに
検挙段階で見た来日外国人による犯罪
外国人被告人・受刑者の処遇
各国の外国人受刑者比率
出国命令制度
国際受刑者移送制度
日本におけるマイノリティ問題
おわりに