不当労働行為に関する救済命令等と裁判例―労働委員会は、何をするところか?

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「労働委員会は、何をするところか?」
2016年3月より2022年2月まで大阪府労働委員会公益委員(最後の2年間は会長職を兼任)を6年間務めた筆者が、その期間において知ったことや、経験したり感じたことについて書いた1冊。第1編では、労働委員会と不当労働行為救済制度についての50のキホンについて延べ、第2編では、不当労働行為に関する救済命令等と裁判例を172例詳解している。企業経営者、人事労務担当者、労働組合、弁護士、社労士など労働問題、労働事件に関わる方々へ必読の書。
『この6年間の労働委員会の活動を通じて、ほとんどの労働組合は決して「怖い」ものではないことを知りました。(略)企業経営者の方々の大部分は、企業で働く労働者の生活を守るために日夜努力を重ねています。しかし、誠に残念ながら、労組法他の労働法や労働組合に対する理解不足が否めません。労働組合は労組法に守られた日本の法制度です。どうか使用者の方々は、労働組合を異分子と思わずに、お互いに法人を発展させるための協力者とみなすくらいの度量をもち、自分はダイバーシティの精神を試されているのだと思っていただければと思います。本書が、使用者側の方々、労働組合の方々、そして労働委員会に関与されている多くの関係者に少しでもお役に立てることができれば幸いです。』 (本書あとがきより)
目次
第1編
労働委員会と不当労働行為救済制度についての50のキホン
1 労働委員会とは、何か?
1 労働委員会は、どうしてつくられたのか?
2 労働組合法には、どのようなことが定められているのか?
3 「中労委」と「都道府県労委」の違いは何か?
4 労働委員会は三者構成であるというけれど、具体的にはどういうこと
か?
5 中労委も都道府県労委も公益委員には政治活動の面での制約があるの
か?
6 労働委員会は行政委員会と聞くけれど、一般の行政の組織とどう違い、労働 委員会で働く事務職員は誰から任命されて何をしているのか?
2 労働委員会は、何をするところか?
7 労働委員会は、何をするのか?
8 労働組合の資格審査は、どうするのか?
9 労組法に適合しない労働組合は、何の保護も受けられないのか?
10 労働争議の斡旋、調停および仲裁とは何か、それぞれはどう違う
のか?
11 労働者供給事業とは何か、労働委員会はどう関わっているのか?
3 不当労働行為救済制度の当事者は誰か?
12 救済命令申立ての申立人と相手方は誰か?
13 労組法上の労働者とは何か?
14 救済命令の申立人の相当部分を占めている合同労組とは何か、どう対応す ればよいのか?
15 公務員は救済命令の申立てができるか、混合組合とは何だろうか?
16 労組法における使用者とは何か?
17 使用者が破産した場合はどうなるのか、破産管財人が相手方となるのか?
18 事業譲渡を受けた会社や、会社分割による分割会社は、労組法上の使用者にあたるか?
4 不当労働行為とは何か?
19 不当労働行為を禁止し、救済制度を設けたのはなぜか?
20 1号の不当労働行為とは、どのようなものか?
21 2号の団交拒否とはどういうものか、団交をしても2号違反になるのか?
22 3号の支配介入とは何か?
23 4号の報復的不利益扱いとは、どういうものか?
5 救済命令とは何か?
24 労働委員会が発する命令とは、どのようなものか?
25 1号の救済命令の内容には、どのようなものがあるか?
26 2号の団交拒否の場合の救済命令とは、どのようなものか?
27 3号の支配介入に対する救済には、どういうものがあるか?
28 文書交付命令やポストノーティスとは、どのようなものか?
29 救済命令はいつ効力が生じるか、救済命令違反への制裁はあるか?
30 救済命令が出るかどうかが微妙な場合には、何が決め手になるのか?
6 不当労働行為の審査手続とは、どういうものか?
31 審査手続と訴訟とは、どこが違うのか?
32 どこの労働委員会へ救済の申立てをすればよいのか?
33 申立ての期間には制限があるのか?
34 審査手続に関与する代理人や補佐人とは何か?
35 労働委員会の審査は、どのように行われるか?
36 労働委員会が不当労働行為を審査する場合、どういう事実の記載を重視しているのか?
37 不当労働行為の成否を認定するためには、何が必要か?
38 労働委員会の求釈明とはどういうもので、これに応じなければならないのか?
39 新たに導入された証人等出頭命令と物件提出命令はどうなのか?
40 審査の実効確保の措置とは何か?
41 不当労働行為事件でも和解があるのか?
7 救済命令への不服申立てとは何か?
42 労働委員会の命令に対する中労委の再審査とはどういうもので、どの範囲までできるのか?
43 労働委員会の命令に対する取消訴訟は、誰が誰を相手にいつまでに行うの か?
44 緊急命令とは何か?
45 取消訴訟の手続とは、どういうものか?
46 裁判所が救済命令等について違法か否かの判断をするのはいつの時点か?
8 いま、労働委員会では何が問題となっているのか?
47 労働組合を装った非弁活動とは、どういうことか?
48 団体交渉に弁護士や社労士はどう関わるべきか?
49 不当労働行為救済申立てが一部の労働委員会に偏っているのはどうしてか、それで困ることがあるならその対策を何かしていないのか?
50 最近IT化の流れなどもあり、労委規則が相次いで改正されたと聞いたが……
第2編
不当労働行為に関する救済命令等と裁判例
1 不当労働行為制度の目的は何だろう?
【1】不当労働行為救済制度の目的は、労働者個人の被害救済だけではなく、組合活動への侵害の除去、是正による集団的労使関係秩序の回復もある(最大判昭和52年2月23日・民集31巻1号93頁(第2鳩タクシー事件))
【2】救済命令制度の目的には将来の同種行為の再発抑制の趣旨を含む(最2小判平成3年2月22日・判時1393号145頁(オリエンタルモーター件))
【3】不当労働行為の状態が是正され、正常な集団的労使関係秩序が回復されたときは救済の必要性がない(最3小判昭和58年12月20日・判タ516号95頁(新宿郵便局事件))
【4】組合員が積極的に権利利益を放棄する意思表示などをしない限り、組合員資格を喪失しても労働組合は原職復帰とバックペイを求められる(最3小判昭和61年6月10日・民集40巻4号793頁(旭ダイヤモンド事件))
【5】不当労働行為による解雇は当然無効である(最3小判昭和43年4月9日・民集22巻4号845頁(新光会事件))
2 不当労働行為救済申立ての要件は何か?
【6】申立人の主張する事実が不当労働行為に該当しないことが明らかなときに該当する(東京地判平成14年8月1日・労委裁例集37集655頁(東日本旅客鉄道千葉動労・不採用支配介入事件))
【7】労組法の組合要件は、労働委員会の国家に対する責務であり使用者の権利保護のための規定ではない(最3小判昭和32年12月24日・民集11巻14号2336頁(日通会津若松支店事件))
【8】企業に在籍する公表された組合員が1人になっても救済の利益は失われない(東京高判平成12年2月29日・労判807号7頁(セメダイン事件))
【9】構成員が一時的に一人となった場合でも組合員増加の一般的可能性がある限り団体性は失われない(東京地判平成16年1月15日・労委裁例集39号90頁(京浜特殊印刷事件))
【10】廃業して解雇したことに対し廃業の撤回などを求める救済内容は履行不能である(東京地判平成20年9月10日・中労委データベース(東陽印刷事件))
【11】申立人が申立てを維持する意思を放棄したものと認められる(東京地判平成元年3月30日・判時1308号152頁(松栄運輸事件))
【12】昇給に関する考課査定とこれに基づく毎月の賃金支払が最後の支払から1年以内であれば1年の除斥期間の適用を受けない(最3小判平成3年6月4日・民集45巻5号984頁(紅屋商事事件))
【13】労働委員会は国外の労使関係を救済対象とできない(東京高判平成19年12月26日・中労委データベース(トヨタ自動車外1社事件))
3 救済申立ができる労働者の範囲はどこまでか?
【14】放送会社と自由出演契約を結ぶ楽団員の労働者性を認める(最1小判昭和51年5月6日・民集30巻4号437頁(CBC管弦楽団事件))
【15】オペラ公演を主宰する財団法人と出演基本契約を締結した合唱団員の労働者性を認める(最3小判平成23年4月12日・民集65巻3号943頁(新国立劇場運営財団事件))
【16】出張修理業務を行う個人代行店について事業者の実態を備えていると認めるべき特段の事情がな