先義後利の経営 渋沢栄一が求めた経済士道

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渋沢栄一は何を考え何を求めていたのか? 「道徳経済合一説」の真意を諸資料から丁寧に読みとき,明快に描き出す。ESG経営など現代の視点も対比的に取り上げつつ,資本主義再生にも通ずる「よき企業者」のあり方を示す。
渋沢栄一と由縁の深い一橋大学で教鞭を執り,長年その思想を研究してきた著者の集大成です。
渋沢が遺した原典に立ち返るだけでなく,ピーター・ドラッカーや安崎暁といった後代の理解者や,志を同じくした松下幸之助・稲盛和夫との共通点,はたまた類似の主張と見なされがちなアダム・スミスやマイケル・ポーターらとの決定的な相違など,さまざまな対比を通じて縦横に論じます。
トップマネジメントから現場担当者まで,「よいことを」「立派に」成し遂げたいと願う企業者(企業で働くあらゆる当事者)すべてに向けたメッセージ!
■序章より
日本資本主義の父と言われる実業家・渋沢栄一が、「論語と算盤」を唱えたことはよく知られている。経済活動における「論語=道徳」と「算盤=経済」との両立を説く渋沢のこの考え方を「道徳経済合一説」とも言う。本書は、①渋沢が唱道した道徳経済合一説の真意を読み解き、それをもとに②渋沢が求めた、現代にも通じる「よき企業者」のあり方を明らかにしようとするものである。本書の標題・副題にある「先義後利」と「経済士道」が、その「あり方」を端的に示すキーワードである。
道徳経済合一説の真意を読み解くなどと言うと、何を今さらと思われるかもしれない。道徳経済合一説はすでに多くの書籍や記事で紹介されているし、その原典とも言うべき渋沢の代表作『論語と算盤』を読まれた人も少なくないだろう。経済活動において、経済だけでもなく、また道徳だけでもなく、その両方を追求するという、道徳経済合一説に関する基本的な理解は、多くの人がすでにお持ちだと思う。しかしこれだけでは、渋沢の考えを表層的にしか理解したことにならない。
表層的な理解で道徳経済合一を論じるときに生まれる、典型的な誤解が二つある。一つは、道徳と経済を「バランスさせる」ことによって両方を追求する、という誤解(バランスの誤解)。もう一つは、道徳と経済の両方を追求しさえすれば「どちらを優先するかは問わない」という誤解(無差別の誤解)。これらの誤解に基づいて、渋沢の道徳経済合一説の解説がなされたり、社会的課題に直面する今日の企業経営に対する「論語と算盤」の示唆が論じられたりすることが、しばしばある。
誤解というなら、真意は何か……
■目次
序 章 渋沢栄一が求めたもの
第1章 道徳経済合一説──「論語と算盤」の真意
第2章 公益と私利をめぐって──道徳経済合一説のエッセンス
第3章 先義後利──合一させる要訣
第4章 経済士道──実業道即ち士道
第5章 三つの義──公への奉仕,誠実,勇気
第6章 実業界の王道・覇道──責任ある企業者
終 章 経済士道を生きる