至誠堂書店

覇権・暴力・保険 海上保険の形成と発展

覇権・暴力・保険 海上保険の形成と発展

販売価格: 2,970円 税込

数量
著者
新谷哲之介・著
発行元
保険毎日新聞社
発刊日
2025-03-17
ISBN
978-4-89293-485-8
CD-ROM
無し
サイズ
A5判 (270ページ)


海上保険といえば商人のための商業的な保険をイメージしますが、海上保険をその形成過程の歴史からたどると、往時は貿易と略奪とが混然として存在し、さまざまな暴力や戦乱のなかから生成されてきた実態が浮き彫りとなります。

本書は、保険の原点といわれる海上保険が、貿易や海運をめぐる危険に対しどのような役割りを担いながら創生・発達してきたか、また、国家どうしの覇権抗争や戦争という特殊なリスクをどう担保してきたかを、世界史的観点から描いています。

貿易は国富の源泉として国の盛衰を左右し、経済的に大国としての地位を築いてきた国々は、国力を伸展させてしばしば海上覇権を争い、これを支える海運、海上保険、貿易金融等を充実させてきました。現在国際的に使用されている保険の原理や約款も、大航海時代から近代にかけて特にヨーロッパを中心に繰り広げられた幾多の戦争、奴隷貿易、アメリカの独立戦争や南北戦争、20世紀の両次大戦などのリスクが基盤となっています。海上保険実務ではいまも戦争危険が担保されて国際的に普遍的な実務慣習として機能しており、それはこうした歴史を通して理解できます。

また、著者が携わる保険実業の視点から、歴史上に現れた諸々の事案やトピックスにも焦点を当て、保険実務を進めるなかで示唆となり参考となる判例や史訓を織り交ぜながら、保険契約に関わる法律原則や制度の成立ち経緯や仕組み、解釈理論等についても説明を加えています。

本書からは激動する世界経済を支える海上保険のダイナミズムと保険の淵源を汲み取ることができ、保険関係者はもちろん貿易関係者、更には広く一般読者の方々にもお勧めの書です。


【主な構成】
序 章
第1章 15 ~ 18 世紀頃のヨーロッパ諸国の貿易の概観
  1 大航海時代の貿易
  2 オランダの隆盛
  3 イギリスの台頭と海上覇権の確立
第2章 イギリスにおける海上保険の発達
  1 保険取引
  2 保険証券に規定された危険
  3 保険証券・約款の改定
  4 武力や暴力のリスクが並ぶ証券文言
第3章 捕獲免許状および報復捕獲免許状
  1 概 要
  2 沿 革
  3 私掠に関する制度
  4 ロイズにおける捕獲リスク引受の是非
  5 船団護送
  6 アメリカ独立戦争とロイズの引受
  7 アメリカ海上保険業の胎動
  8 私掠の終焉
第4章 奴隷貿易
  1 人身売買と経済
  2 奴隷貿易の実態
  3 人間を対象とする貨物保険
  4 Gregson v. Gilbert-奴隷商人グレッグソン
  5 Gregson v. Gilbert-事件の経緯
  6 Gregson v. Gilbert-裁判
第5章 最大善意
  1 告知義務
  2 最大善意
  3 Carter v. Boehm 事件-襲撃の兆候
  4 Carter v. Boehm-フォート・マールボロの襲撃
  5 保険契約
  6 争 点
  7 判例法理の承継
第6章 ワランティー
  1 ワランティーとは何か
  2 DeHarn v. Hartley
  3 ワランティー法理の見直し
第7章 アメリカ合衆国創建後の海上保険
  1 ニューヨーク保険業者協会の活躍
  2 アラバマ号事件
第8章 捕獲(Capture)
  1 捕獲は起き得るか
  2 捕獲の沿革
  3 捕獲審検
  4 Andersen v. Marten 事件-保険の内容
  5 Andersen v. Marten 事件-事件の背景および経緯
  6 Andersen v. Marten 事件-捕獲審検
  7 Andersen v. Marten 事件-保険填補責任
  8 捕獲と便宜置籍
第9章 アヘン貿易
  1 アヘン貿易とアヘン戦争
2 商社・銀行・船会社の活動
  3 東洋貿易における保険の状況
  4 アヘンサプライヤーの変化
  5 日本の貨物保険の状況
第10 章 因果関係
  1 保険における因果関係
  2 近因原則
  3 因果関係の重要性
  4 保険理論について
第11 章 戦争とは何か
  1 War(戦争)という語
  2 Kawasaki v. Bantham
  3 なぜ日中両国は戦争であると認めなかったのか
  4 戦争の名を避けたことの影響-サプライチェーンの遮断効果
  5 戦争保険約款の規定のあり方
【別注】/【付録】Lloyd’s SG form 証券本文
ページの先頭に戻るページの
先頭に戻る